2023年

部門 受賞作
最高賞(パルムドール) 「アナトミー・オブ・ア・フォール」(Anatomy of a Fall)

アナトミー・オブ・ア・フォール

法廷で夫殺しの罪に問われた女性のドラマ。裁判で潔白を照明しようとする。

 監督:ジュスティーヌ・トリエ(1978年生まれのフランスの女性監督。「愛欲のセラピー」など)
 主演:ザンドラ・ヒュラー(ドイツの女優)
 公開日:未定
 言語:仏語、英語、独語
 製作国:フランス
 米国配給:ネオン
グランプリ賞 「ゾーン・オブ・インタレスト」(The Zone of Interest)

ゾーン・オブ・インタレスト

ホロコーストの残虐行為についての映画。息をのむようなホラー作品。 ジョナサン・グレイザー監督にとって「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」以来10年ぶりの作品。 カンヌ国際映画祭のコンペティション(賞争い)部門に出品され、激賞された。
 監督:ジョナサン・グレイザー(英国人、「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」)
 主演:サンドラ・フラー(ドイツの女優、1978年生まれ)
 公開日:未定
 配給:A24
 言語:ドイツ語
 製作国:英国、ポーランド
審査員賞 「フォールン・リーブス」(Fallen Leaves)

フォールン・リーブス

フィンランドの名匠による風刺的でユーモアのあるドラマ。2人の孤独な人間の偶然の出会いと運命についての物語。

 監督:アキ・カウリスマキ(「過去のない男」などで有名)
 主演:アルマ・ポウスティ(「TOVE/トーベ」など)
 公開日:未定
 言語:フィンランド語
 製作国:フィンランド
監督賞 「ポトフ」
監督:トラン・アン・ユン(ベトナム出身のフランス人)
国:フランス
男優賞 役所広司
「パーフェクト・デイズ」 役所広司

※2004年の柳楽優弥(誰も知らない)に続き、日本人として史上2人目の俳優部門での受賞。東京を舞台にした日独合作映画(ビム・ベンダース監督)で、労働者階級の男性を演じた。朝のうちに街中の公共トイレを清掃する一方で、自由な時間を使って本を読んだり、木を育てたり、周囲の人々を観察したりして過ごす役柄。
本作は、キリスト教関連の団体が贈るエキュメニカル賞も受賞した。
女優賞 メルベ・ディズダル
「About Dry Grasses」
脚本賞 「怪物」
脚本家:坂元裕二

怪物
※脚本の坂元裕二氏は映画「花束みたいな恋をした」「世界の中心で、愛をさけぶ」、テレビドラマ「東京ラブストーリー」「大豆田とわ子と三人の元夫」などの名シナリオで知られるヒットメーカー。是枝裕和監督とは本作で初めてタッグを組んだ。日本映画のカンヌ脚本賞は2021年の「ドライブ・マイ・カー」(脚本:濱口竜介&大江崇允)以来で、史上2作目。
本作は、性的少数派を題材にした作品に贈られる「クィア・パルム賞」も受賞した。
息子の行動に不気味な変化を感じた母親が、教師と対峙するサスペンス。

 監督:是枝裕和
 脚本:坂元裕二
 主演:安藤サクラ
 公開日:2023年6月2日
 言語:日本語
 製作国:日本
 配給:東宝、ギャガ
日本からの出品(ノミネート) <コンペティション部門>
「怪物」
怪物
 監督:是枝裕和

「パーフェクト・デイズ」
パーフェクト・デイズ
 監督:ビム・ベンダース(ドイツ)
 主演:役所広司
 助演:柄本時生、麻生祐未、石川さゆり、三浦友和

2022年

部門 受賞作
最高賞(パルムドール) 「逆転のトライアングル」
逆転のトライアングル
国:スウェーデン、独、仏、英
監督:リューベン・オストルンド
(日本公開:2023年2月23日)
※皮肉に満ちた欧州映画。ブルジョワ風刺劇。オストルンド監督(スウェーデン人)にとって、前作「ザ・スクエア 思いやりの聖域」に続いて2作品連続のパルムドールとなった。 オストルンド監督による初の英語作品。従来作より娯楽色を強めた。
続き▼ セレブが乗る豪華客船がクルーズ中に無人島に難破する。乗客・乗員によるサバイバル・ゲームがスタート。船内で掃除係だった中年女性が、食糧調達などのスキルを活かして、集団内秩序のトップに立つという逆転現象が起こる。
■評点:ロッテン72%、IMDb7.5
■米興収:450万ドル
■製作費:1600万ドル
グランプリ賞 「CLOSE/クロース」
Close
 国:ベルギー
監督:ルーカス・ドン
※少年2人の友情の行方
(日本公開:2023年7月14日)
・米国映画評議会議(NBR)


「Stars at Noon」
 国:米国
審査員賞 「EO イーオー」
EO
 国:ポーランド
監督:イエジー・スコリモフスキ
※主人公は一匹のロバ。活躍していたサーカス団から外の世界へ。
(日本公開:2023年5月5日)
・ニューヨーク批評家賞
・全米映画批評家協会賞(NSFC)
監督賞 「別れる決心」
監督:パク・チャヌク
別れる決心
 国:韓国
※刑事と容疑者が惹かれ合う愛のサスペンス。米国の批評家から高評価を得た。パク・チャヌク監督は「オールド・ボーイ」「お嬢さん」などの傑作で知られる。
(日本公開:2023年2月17日)
・フロリダ批評家賞 監督賞、脚本賞、作品賞次点、国際映画賞、撮影賞
・ワシントン批評家賞 外国語映画賞
・シカゴ批評家賞 外国語映画賞
・オクラホマ批評家賞 外国語映画賞
男優賞 ソン・ガンホ
「ベイビー・ブローカー」
女優賞 ザーラ・アミール・エブラヒミ
「聖地には蜘蛛が巣を張る」

歴代の一覧


2020年代の最高賞(パルム・ドール)

カンヌ国際映画祭 最高賞(パルムドール)
受賞作品 監督
2023 「アナトミー・オブ・ア・フォール」(Anatomy of a Fall)

※法廷で夫殺しの罪に問われた女性のドラマ。
 言語:仏語、英語、独語
フランス ジュスティーヌ・トリエ
※女性監督として3人目の受賞。1978年生まれのフランス人。過去作は「愛欲のセラピー」など。
2022 「逆転のトライアングル」

逆転のトライアングル

 予告編→
スウェーデンほか リューベン・オストルンド
※「ザ・スクエア 思いやりの聖域」に続き2度目の受賞
2021 「チタン」

チタン

 予告編→
フランス ジュリア・デュクルノー
※女性監督として2人目の受賞
2020 新型コロナウイルス感染拡大の影響により中止

2010年代の最高賞(パルム・ドール)

受賞作品 監督
2019 「パラサイト 半地下の家族」

 予告編→

 動画配信(Amazon字幕版)→

 動画配信(Amazon吹替版)→
韓国 ポン・ジュノ
2018 「万引き家族」

 予告編(Amazon)→
日本 是枝裕和
2017 「ザ・スクエア 思いやりの聖域」

 予告編(Amazon)→
スウェーデン リューベン・オストルンド
2016 「わたしは、ダニエル・ブレイク」

 予告編(Amazonビデオ)→
イギリス ケン・ローチ
2015 「ディーパンの闘い」

 予告編(Amazonビデオ)→
フランス ジャック・オーディアール
2014 「冬の眠り」 トルコ ヌリ・ビルゲ・ジェイラン
2013 「アデル、ブルーは熱い色」

 予告編(Amazonビデオ)→
フランス アブデラティフ・ケシシュ
2012 「愛、アムール」

 予告編(Amazonビデオ)→
オーストリア ミヒャエル・ハネケ
2011 「ツリー・オブ・ライフ」

 予告編(Amazonビデオ)→
アメリカ テレンス・マリック
2010 「ブンミおじさんの森」 タイ アピチャッポン・ウィーラセタクン

2000年代の最高賞(パルム・ドール)

受賞作品 監督
2009 「白いリボン」

 予告編(Amazonビデオ)→
オーストリア ミヒャエル・ハネケ
2008 「パリ20区、僕たちのクラス」

 予告編(Amazonビデオ)→
フランス ローラン・カンテ
2007 「4カ月、3週間と2日」 ルーマニア クリスティアン・ムンジウ
2006 「麦の穂をゆらす風」

 予告編(Amazonビデオ)→
イギリス ケン・ローチ
2005 「ある子供」

 予告編(Amazonビデオ)→
フランス ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
2004 「華氏911」 アメリカ マイケル・ムーア
2003 「エレファント」 アメリカ ガス・ヴァン・サント
2002 「戦場のピアニスト」

 予告編(Amazonビデオ)→
フランス ロマン・ポランスキー
2001 「息子の部屋」 イタリア ナンニ・モレッティ
2000 「ダンサー・イン・ザ・ダーク」

 予告編(Amazonビデオ)→
デンマーク ラース・フォン・トリアー

1990年代の作品賞(パルム・ドール)

受賞作品 監督
1999 「ロゼッタ」 ベルギー ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
1998 「永遠と一日」 ギリシャ テオ・アンゲロプロス
1997 「うなぎ」 日本 今村昌平
「桜桃の味」 イラン アッバス・キアロスタミ
1996 「秘密と嘘」 イギリス マイク・リー
1995 「アンダーグラウンド」 フランス エミール・クストリッツァ
1994 「パルプ・フィクション」 アメリカ クエンティン・タランティーノ
1993 「ピアノ・レッスン」 ニュージーランド ジェーン・カンピオン
「さらば、わが愛/覇王別姫」 香港 チェン・カイコー
1992 「愛の風景」 スウェーデン ビレ・アウグスト
1991 「バートン・フィンク」 アメリカ イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン
1990 「ワイルド・アット・ハート」 アメリカ デヴィッド・リンチ

1980年代の作品賞(パルム・ドール)

受賞作品 監督
1989 「セックスと嘘とビデオテープ」 アメリカ スティーブン・ソダーバーグ
1988 「ペレ」 デンマーク ビレ・アウグスト
1987 「悪魔の陽の下に」 フランス モーリス・ピアラ
1986 「ミッション」 イギリス ローランド・ジョフィ
1985 「パパは、出張中!」 ユーゴスラビア エミール・クストリッツァ
1984 「パリ、テキサス」 西ドイツ ヴィム・ヴェンダース
1983 「楢山節考」 日本 今村昌平
1982 「ミッシング」 アメリカ コスタ=ガヴラス
「路」 トルコ ユルマズ・ギュネイ
1981 「鉄の男」 ポーランド アンジェイ・ワイダ
1980 「影武者」 日本 黒澤明
「オール・ザット・ ジャズ アメリカ ボブ・フォッシー

1970年代の作品賞(最高賞)

受賞作品 監督
1979 「ブリキの太鼓」 西ドイツ フォルカー・シュレンドルフ
「地獄の黙示録」 アメリカ フランシス・フォード・コッポラ
1978 「木靴の樹」 イタリア エルマンノ・オルミ
1977 「父 パードレ・パドローネ」 イタリア パオロ・タヴィアーニ、ヴィットリオ・タヴィアーニ
1976 「タクシー・ドライバー」 アメリカ マーティン・スコセッシ
1975 「小さな火の歴史」 アルジェリア モハメッド・ラクダル=ハミナ
1974 「カンバセーション…盗聴…」 アメリカ フランシス・フォード・コッポラ
1973 「スケアクロウ」 アメリカ ジェリー・シャッツバーグ
「雇い人」 イギリス アラン・ブリッジス
1972 「黒い砂漠」 イタリア フランチェスコ・ロージ
「労働者階級は天国に入る」 イタリア エリオ・ペトリ
1971 「恋」 イギリス ジョゼフ・ロージー
1970 「M★A★S★H マッシュ」 アメリカ ロバート・アルトマン

1960年代の作品賞(最高賞)

受賞作品 監督
1969 「If もしも....」 イギリス リンゼイ・アンダーソン
1968 五月革命(フランス)のため中止
1967 「欲望」 イギリス ミケランジェロ・アントニオーニ
1966 「男と女」 フランス クロード・ルルーシュ
「蜜がいっぱい」 イタリア ピエトロ・ジェルミ
1965 「ナック」 イギリス リチャード・レスター
1964 「シェルブールの雨傘」 フランス ジャック・ドゥミ
1963 「山猫」 イタリア ルキノ・ヴィスコンティ
1962 「サンタ・バルバラの誓い」 ブラジル アンセルモ・ドゥアルテ
1961 「ビリディアナ」 スペイン ルイス・ブニュエル
「かくも長き不在」 フランス アンリ・コルピ
1960 「甘い生活」 イタリア フェデリコ・フェリーニ

1950年代の作品賞(最高賞)

受賞作品 監督
1959 「黒いオルフェ」 フランス マルセル・カミュ
1958 「戦争と貞操」 ソ連 ミハイル・カラトーゾフ
1957 「友情ある説得」 アメリカ ウィリアム・ワイラー
1956 「沈黙の世界」 フランス ジャック=イヴ・クストー、ルイ・マル
1955 「マーティ」 アメリカ デルバート・マン
1954 「地獄門」 日本 衣笠貞之助
1953 「恐怖の報酬」 フランス アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
1952 「2ペンスの希望」 イタリア レナート・カステラーニ
「オセロ」 モロッコ オーソン・ウェルズ
1951 「ミラノの奇蹟」 イタリア ヴィットリオ・デ・シーカ
「令嬢ジュリー」 スウェーデン アルフ・シェーベルイ
1950 予算不足のため中止

1940年代の作品賞(最高賞)

受賞作品 監督
1949 「第三の男」 イギリス キャロル・リード
1948 予算不足のため中止
1947 なし
1946 「地球は赤くなる」 デンマーク ボディル・イプセン、ラウ・ラウリッツェン
「失われた週末」 アメリカ ビリー・ワイルダー
「田園交響楽」 フランス ジャン・ドラノワ
「逢びき」 イギリス デヴィッド・リーン
「ニーチャ・ナガール」 インド チェタン・アナンド
「無防備都市」 イタリア ロベルト・ロッセリーニ
「白き処女地」 メキシコ エミリオ・フェルナンデス
「もだえ」 スウェーデン アルフ・シェーベルイ
「最後のチャンス」 スイス レオポルト・リントベルク
「翼のない男たち」 チェコスロバキア フランチシェク・チャープ
「決定的な曲り角」 ソ連 フリードリッヒ・エルムレル

カンヌ国際映画祭の提唱者ジャン・ゼー

カンヌ国際映画祭は、フランス政府の教育大臣だったジャン・ゼー氏が1938年に提唱し、創設されました。

ジャン・ゼーは、フランスの政治家、法学者、作家です。1904年8月6日オルレアン生まれ。1936年から1939年まで国民教育相を務めました。

ゼー氏は教育大臣として、フランスの教育制度を改革しました。最も重要な業績は、全ての子供に公教育を提供する「ジャン・ゼー法」の制定です。また、フランス国立図書館の設立や美術館の改革も行いました。ジャン・ゼーの名前は多くの学校や公共施設に命名されています。

文化分野でも活躍しました。映画の愛好家であり、映画産業の育成に貢献しました。ゼー氏の提唱により、1939年9月1日に第1回目のカンヌ国際映画祭が開催される予定でしたが、ヨーロッパの戦況が悪化したため、中止になりました。

反ナチスの活動に関与していたことから、第二次世界大戦でフランスを占領したドイツ軍に逮捕され、投獄されました。そして1944年6月20日、ナチスに殺害されました。フランスがナチスから解放され、第二次世界戦争が終結した後の1946年、ついに第1回カンヌ国際映画祭が開催されました。